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◆ ◆ ◆
一国の惨状は悲惨だ。
道端に人は倒れ、家屋は荒み、野犬が骨を咥え彷徨う。
「ひでぇ」
「これが一か月前まで日本一最盛繁栄してた国の現状か」
「影響って、おそろしいですね」
静季がぽつりつぶやく背中に、重いなにかが当たった。
咄嗟に軽い声をあげ、なにかがこちらを振り返る。
野晒しを絵にかいたような破落戸の男だ。
「おい!気ィつけろや!!」
ぶつかってくるなりそう吐き捨て、静季はちいさくすみませんとつぶやく。
熱いものがこみ上げ、静季の瞳がかすかに揺れる。
それが乾坤堂の闘志に火をつけた。
刹那、破落戸がなにかに顔面を蹴飛ばされ、後ろに倒れた。
「!!」
引き締まった筋肉。獣毛の腰巻。ケモミミ。
「タスケッ」
経蔵タスケ。情報屋の飛脚キツネで、乾坤堂にはなにかしら情報提供をし、飯の種を運ぶ。
「兄貴、そいつ、”スリ”の常習ですぜ。静季姐サンの財布、いまごろやつの懐でさァ」
ンだとおおおおおおお!!!!!!
「い、いや、これはだなその」
男は有無も言われず、袋叩きにされた。
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