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「治安悪すぎだろ」
「仕方ないっスよ。こんな状態ですから」
また捜査か?と北條がタスケに云った。
「ええ。これほどひでぇ有様になるのは、”中枢”になにか異変が起こったのではないかと、公安から密命を受けまして、隠密調査を」
「”中枢”ってのは、おそらくあれだろ?」
月弥が辰宮城という名の伏魔殿を指さす。
「ええ。どうやらあの城の・・・・お姫様に、なにやらあるようでさァ」
◇ ◇ ◇
タスケが取材した関係者曰く──。
姫は元来、とても礼儀正しく、しとやかで清楚な、社会人としては申し分なき手本たる人格者であった。
とはいえ冷静かつおとなしい人柄がゆえに、感情を素直に表に出さぬ節もあり、16の娘にしてはあまり可愛げがないという声もささやかれ、影では『石姫』と揶揄する奥女中や局もいたという。
あの晩のこと───
姫が突如、城を抜け出したという。家来が総動員で捜索するも行方知れず。
しかし、朝になると、戻ってきた。
不安であっただろうと表情をうかがうが、いつもと変わらぬ。
だが少々ようすがおかしい。
うしろに小柄な老人を連れていたのだ。
何者かと質すと、”客人です”と姫は仰られた。
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