第6話 【貧乏神《びんぼうがみ》奪取作戦《だっしゅさくせん》】

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    「治安(ちあん)(わる)すぎだろ」 「仕方(しゃァ)ないっスよ。こんな状態ですから」 また捜査(そうさ)か?と北條がタスケに云った。 「ええ。これほどひでぇ有様(ありさま)になるのは、”中枢(ちゅうすう)”になにか異変(いへん)が起こったのではないかと、公安(こうあん)から密命(みつめい)を受けまして、隠密(おんみつ)調査(ちょうさ)を」 「”中枢”ってのは、おそらくあれだろ?」 月弥が辰宮城という名の伏魔殿(ふくまでん)を指さす。 「ええ。どうやらあの城の・・・・お姫様(ひめさま)に、なにやらあるようでさァ」 ◇   ◇   ◇ タスケが取材した関係者(かんけいしゃ)(いわ)く──。 (ひめ)元来(がんらい)、とても礼儀正しく、しとやかで清楚(せいそ)な、社会人としては申し分なき手本(てほん)たる人格者(じんかくしゃ)であった。 とはいえ冷静(れいせい)かつおとなしい人柄(ひとがら)がゆえに、感情を素直に表に出さぬ(ふし)もあり、16の娘にしてはあまり可愛げがないという声もささやかれ、影では『石姫(いしひめ)』と揶揄(やゆ)する奥女中(おくじょちゅう)(つぼね)もいたという。 あの(ばん)のこと─── 姫が突如、城を抜け出したという。家来が総動員で捜索するも行方知れず。 しかし、朝になると、戻ってきた。 不安であっただろうと表情をうかがうが、いつもと変わらぬ。 だが少々ようすがおかしい。 うしろに小柄(こがら)老人(ろうじん)を連れていたのだ。 何者かと(ただ)すと、”客人(きゃくじん)です”と姫は(おっしゃ)られた。  
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