ヒロシ、解放されるの巻

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ヒロシ、解放されるの巻

「なぁ、ヒロシ……落ち込むなよ?」 「そうよ、ヒロシ……まだ終わった訳じゃないでしょ?」 父ちゃん、母ちゃんがポリスハウスに迎えに来てポリスマンから厳重注意を受け、自宅に戻ってきた。 事情を話そうとなっちゃんに連絡するも、連絡が繋がらない。 絶望の無限ループ状態に陥った。 車やタクシーを利用して向かおうとしたが、頑なに父ちゃんと母ちゃんに制止される。 自宅に戻り冷静さを取り戻すと、姿見を見て息を飲んだ。 我ながら、なかなかの破壊力に加え、破滅的絶望要素を含んだ容姿だった。 そこに希望的観測など、一切なかった。 「なぁ……ヒロシ。そんなに落ち込むな」 「パパの言う通りよ、ヒロシ」 まさかこれほどまでに、自分のファッションセンスを疑う事になるとは…… リビングの隅で、絵に描いたようにいじけていた俺を励ます父ちゃんと母ちゃん。 「お前には、月光下綿があるじゃないか…なぁ?」 「でも、パパ?そろそろ始めないと時間が…」 「そうだな……だが、しかし……」 「……何よ、時間って」 父ちゃんと母ちゃんの歯切れが悪い。 「実はだな……その月光下綿の力を使うにはいろいろ準備が必要でな……」 「……何よ?」 「まず始めに……その月光下綿を履いてスフィンクスのポーズをとる。その状態で月の光を八時間浴びなければならない……そう、まるで光合成のように……」 「……はい?」 「まだあるわよ!お供え物をするようにあなたの右手には、キャベツ……あっ、刻んだやつね。左手には、味噌汁と白米。味噌汁の具材は……」 「えぇぇぇぇぇい、ちょっと待てぇぇぇぇい」 何だよ、それ…… キャベツの千切りと味噌汁、白米の間に俺? まるで「トンカツ定食」状態じゃないか? そんな状態で八時間もいなきゃいけないの? 「そもそもだけどさ…今日って満月なの?」 確か母ちゃんが満月の日じゃないと使えないって…… 「うん、そうよ……二一時三十分だって……」 「……今って、何時なの?」 「今か……今は……一三時だな……」 「……」 「……」 「……」 「あんまり、時間ないよね?」 「……そうね」 「……やるなら、早い方がいいな」 「……」 「……」 「……」 「……早く言ってよぉぉぉぉぉぉぉ」
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