父ちゃんやい、母ちゃんやい

1/1
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

父ちゃんやい、母ちゃんやい

拝啓 父ちゃん、母ちゃん。 あなた達の息子……ヒロシは…… 後悔しております…… まさか、ここまで世間の皆様からの厳しい視線に晒されるとは思いませんでした。 一縷の望みを抱いて外に出たは良かったのですが、そんな小さな望みは呆気なく消え去りました。 小学生の集団に出くわすと…… 「あっ、変な人いるよ」と後ろ指を指され…… 私と同年代くらいの女性には 「ねぇ、あのファッション凄くない?」 と囁き声が聞こえて一瞬舞い上がりましたが 「いや…あれは単にヤバイやつでしょ?」 「だって顔面偏差値ヤバ過ぎでしょ?」 と落とされました。 ……って事は、顔面偏差値が高ければ何でも アリだと学んだヒロシです。 偏差値ってやっぱり高いと 何でも得をするんですね…… もっと勉強しておけば良かったです。 でも顔面偏差値は、上がりそうにありません。 来世は貴族の家庭で、美男美女の両親の元に生まれて趣味は「クラシック音楽」を聞くこと… 特技は乗馬を嗜んでいます… そんな事をさらっと言ってみたいものです。 父ちゃん、母ちゃん…ごめんなさい。 ついでに申し上げますと… 只今絶賛連行中です…… なっちゃんと動物園でデートをする約束をしていたので、駅で切符を買っていた所にポリスマンが現れました。 どなたか知りませんが、通報があったみたいです。 「ズボンの上にブリーフパンツを履いている変態が駅に向かって歩いていると……」 やっぱり黒と白のコントラストがいけなかったのでしょうか? はたまた私の「変態的容姿」がいけなかったのでしょうか? このままじゃ、なっちゃんに会えそうにありません。 なっちゃんに会って、前作言えなかった 「フォーエバー・ラブ」を言いたくて 前作から半年も経ってしまいました。 あとさっきからこの状態から解放されたいと願っているのですが、いっこうに叶いそうもありません。 ……なんなんですか? 満月の夜に『月』の『光』の『下』で履く『綿』百パーセントのブリーフパンツ……『月光下綿』 本当に満月の夜にしか発動しないんですね、このブリーフ…… うちの家系は、本当に凄いですね…… 父ちゃん……母ちゃん…… 私、このままだと違った意味で伝説の男になりそうです。 それにしても…… やりましたね、報道関係者の方々。 夕方の報道番組のトップニュースは、これで決まりましたね。 『下半身がシマウマのミノタウロス、現れる』 そんなキャッチで、いかがでしょうか? はぁ……それよりも。 早く、迎えにきて下さいまし。 あなた方の住む家から、歩いて徒歩五分にある駅前のポリスハウスにいます…… さっきからカツ丼は、いつ来るんだと期待していても全然来ません。 こんな「変態的容姿」の男には、カツ丼もくれないのですか? そんな事は、刑事ドラマにはなかったです。 ……えぇ、そうですよ。 今までお伝えした出来事は、自宅を出て僅か五分の出来事です…… なっちゃんに会えずに、このままパートⅡが終わっちゃうんですか? あと、疑問に思ったのですが…… そもそも今日って、満月何ですかね? もし満月じゃなかったら、ブリーフ履いただけで 終わっちゃいますよ? さすがにそれは、ヤバくないですか? 敬具
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!