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記者たち
「妹さんの具合はどうですか。これから記念演奏会や副賞の留学がありますが、大丈夫ですか?」
「病弱は生まれつきなので、上手に付き合っている感じです。まず、記念演奏会に出られることを願っています」
「同じ作曲家として、妹さんの才能をどうご覧になりますか?」
「神様からの素晴らしい贈り物だと思います」
「妹さんが大賞を獲られて、妬ましいですか」
私を怒らせたいのだろうか。その手に乗るものか。
「そんなことは、ありません。妹が誇らしいです」
「あなたがたの恩師はこの国の楽壇トップであり、情実投票があったのではという噂がありますが、何か知っていますか」
あまりに酷い質問に、言葉が出てこない。いつの間にか傍らに兄弟子のモリスがいて、代わりに答えてくれた。
「根も葉もないことを。俺が落ちまくっていたときに、大賞を獲ったやつに聞いたか?」
記者たちはひるんだ。モリスの落選が、大きな事件に発展したことを誰もが知っている。今では、この国の楽壇で最も活躍している作曲家のひとりだ。彼はさらに続けた。
「去年まで大賞受賞者は男ばかりだったな。彼らに同じことを言ったのか?」
記者たちは、目をしばたたいたり、そらしたりした。
「言っていませんよ」
取材陣のなかから、声を発したのは女性だった。モリスは深くうなずいた。
「若い女性には強くでるのだな。そのような卑怯者を俺は許さん」
「モリス、いいの、私は大丈夫」
彼の端正な顔が、ほんの一瞬緩んだ。語気を荒げたのは牽制なのだ。
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