☆ 居場所

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☆ 居場所

 灼熱の太陽にジリジリと焼かれているようだった。暑くて、苦しくて、誰か助けてって叫んでた。でもふと気づくんだ。助けてくれる人なんて、誰もいないとーー。  でも、灼熱の熱さのなかに、優しい温もりに気づく。ゆっくりと瞳を開くと、そこには金色の光と碧色の煌めきがあった。 「おう・・・・・・じさま・・・・・・」  自分が発した声がとても掠れていた。視界もなぜか揺らいでいる。体がずっしりと重くて動かせない。 「シエル、シエル。大丈夫かい。しんどいね、でも、大丈夫だよ」  優しい声、そして暖かな手の温もりが頭を撫でている。この人は、本当に不思議なお方だ。僕の知らなかったものをたくさん与えてくれる。胸が一杯になって、苦しくなるくらいに。 「わかる? 熱を出して倒れたんだよ」  その問いかけに、僕は小さく頷く。そうだ。今日は視察に同行していたのだ。朝から体が気だるかったが、気にも止めていなかった。時間がたつにつれそれは悪化する一方で、どうしようかと不安になった。気づかれてはいけない。体調が悪いなんて知れたら。体調の管理もできないのかと叱られてしまうからと。
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