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その翌日。
いつものように登校してすぐ机に突っ伏し寝たふりを決め込んでいると、しばらくして廊下の方があからさまにざわつき始めた。
ーーなんだ?誰かうんこでも漏らしたのか?
たかが脱糞如きで何を騒ぎ立てることがあろうか。友達が脱糞した時は黙って両手で受け止めるくらいの度量と懐深さを備えておくべきだ。
「ヤバい。今日桐島君来るんだって」
「うそ!!どうしよう。私ファンなんだけど」
「1年の時殆ど来なかったもんね。2年は来るのかな」
「来て欲しいなぁ〜。芸能人が同じクラスにいるってどんな感じなんだろ」
どうやら脱糞ではなかったらしい。
それにしても男女共に物凄い騒ぎっぷりだ。
耳に入ってきた話の内容を聞く限り、あの噂の有名モデルが今日学校に来るのだろう。
気にはなる。
が、どうせ関係ない。
そう、どうせ。声の大きい奴がまた1人増えるだけの話だ。
ガラリと教室の扉が開くと、クラスメイト達は一斉に入ってきた人物に目を向けた。
あからさま過ぎる視線の集め方に自重しろよと呆れもしたが、それだけ無条件に他人の注目を集める人間がどんな姿をしているのかが気になって、紛れるようにしてその人物を見た。
ーーあ、雑誌で見た事ある顔だ。
雑誌買ったことないけど。
駅の広告とかでたまに見かけるし、テレビでも見た事ある気がする。
テレビ殆ど見ないけど。
ただひとつ言えるのは、日常生活においてメディアに触れる機会が極端に少ない私でも存在くらいは聞いたことがある程、現在芸能界で注目を浴びている人物だということだ。
確か名前はーー。
“桐島瑛斗”
学内どころか日本中から関心が集まっている、生まれながらにしての勝ち組だ。
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