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「ひな!散歩行こ!亅
おいこら、今何時だと思ってんだ。夜中の3時だぞ!なんでこんな時間に起きられんの?そしてどこいくの?雛菊のすることはよくわからない。とりあえず、寝癖を直して身支度をした。
「いや〜。朝の空気は清々しいねぇ〜。亅
僕はそうは思わない。眠い…。こんな時間に出歩いて大丈夫なのか…?そんなことばっか考えながら雛菊に付いていくと、公園についた。あたりはまっくらで、足元も見えない。雛菊が懐中電灯を持ってその明かりと遠くにある街灯の明かりを頼りに進んでいった。別に怖くはない。怖いのは得意ではないが、ほらあれだ。自分よりビビってるやつが近くにいると冷静になるやつ。雛菊は僕にひっついて離れない。そのままじゃ流石に暑苦しいが自然と嫌ではなかった。高台に続く階段が見えて、少しづつ上がっていった。
ビビってひっついたまんまの雛菊がこんな事を言ってきた。
「昔ね、ここの階段から落っこちたところを近所のお兄ちゃんに助けられたの。その人、緋尚太(ひなた)って言う名前で緋尚くんって読んでたの。あたしのことは雛ちゃんって呼んでくれてた。でも、そのお兄ちゃんは…もういないの。死んじゃったんだ。雨の日に、車に轢かれて。まだその時、あたしは小学生でさ。悲しくって苦しくって。ずっと泣いてた。それ以来、雨が怖くなっちゃったの。雨が降ると緋尚くんのこと思い出しちゃうから…。また、大事な人が、大好きな人が消えちゃったらどうしようって。……ごめん。へんなはなししちゃったね。忘れて。亅
そっか。そうだったんだ。でも大丈夫。僕は勝手に雛菊と一緒にいるからな!そう言って背中をポンポン撫でた。
「ありがと、ひな。ひなは優しいな。嬉しいよ。あ、もう頂上だよ!亅
上を見ると長い階段の終わりが見え、僕らは走った。息を整えていると、眩しい光が目を指した。手を目にかざしながらながら見上げると、大きな朝日が顔を出していた。綺麗。
「ここね、よく緋尚くんが連れてきてくれたの。辛いときはここに来ると、スカッとしてさ、がんばれるんだよね。ほら、あっちに並木道があるでしょ?あそこで大好きな人とデートするのがあたしの夢なの!亅
確かに、こんなきれいな並木道でデートとは、おしゃれだな。楽しそう!
「今年はもう桜が散っちゃったけど、来年の春にはまたこようね。紅葉も雪景色も綺麗だから、近いうちに来よっか!亅
うん!そう言って僕はぴょんとはねた。
このあとも僕らは並木を歩いた。
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