お料理日和

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お料理日和

「ひなー!今日はピクニックに行こう!隣町の青葉公園行こう!亅 了解ー!と雛菊に返事をした。初夏の朝、必死にお弁当をつくっている雛菊を眺めていた。どうやら、料理が苦手らしい。さっきなんか茹でたてのパスタをひっくり返して洗う羽目になったり、唐揚げの油がはねて火傷しそうになったり。ほんと、おっちょこちょいだなぁ。なんて思いながらマカロンの形のクッションに座った。僕と出会った記念に買ってくれたものだ。ピンクのストロベリー味。可愛いだろ?そんなことばっか考えてたら目の前のドアが開いた。というか壊れた。目の前の部屋は台所だ。雛菊が台所でコケたらしい。雛菊が突進する形でこちらに突っ込んできた。そこで見事なタックルがくる。 がっしゃーーん。そういう音が似合うだろう。僕の背中にソースビタビタのソース焼きそばが降りかかった。 「ごめん!本当にごめんね!ゲガはない!?亅 怪我はねーけど…背中がぁぁぁぁ…ソースでベタベタに……。まあ、でも雛菊にけががなかったからセーフかな。 その後、あの公園の並木を通った。あの後キッチンの片付けや風呂に入っていたせいで遅くなり、並木道につく頃にはすっかり夕日が顔をだしていた。 僕らは並んで歩く。あの後、お弁当を作るのを諦めたから手ぶらだ。 「ひな、ごめんね。お弁当できなくて、、、」 気にしないで。僕は偏食だから食べれるものは少ないし。 「ありがと、ひな。慰めてくれるんだね。、、、私さ、最初ひなに会った時、体壊して休んでるって言ったでしょ?でも、それは違うの。私、自分から仕事を辞めたの。」 、、、なんで辞めたの?何があったの? 「じつはね、職場で酷いいじめにあってさ。恋人にも捨てられるし、会社の人たちからは虐められるし。毎日毎日頑張ってるのに何もできないし。あんたなんか要らない。あんたが居ない方が楽って言われたよ。努力と実力は比例しないんだ。じゃあ、何のために私は頑張って学校いって勉強して、宿題も部活も就活もやったの?全部、意味なんかなかったじゃん!もう、生きててもしょうがない。私が死んだって、誰も悲しまない。そう分かったの。だから、私は仕事を辞めて死のうとしたの。1月10日、、、緋向くんが死んだあの日に、展望台の上から飛び降りてしまおうって決めたの。私の決心は硬いよ。誰に何を言われようと、死ぬつもり。死ねなかったら、またもう一度飛び降りるわ。」 そっか。それは辛かったね。僕もだよ。僕もみんなに裏切られて、死んだから。 え、、、死んだ?何言ってんだろ僕。死んでなんかいないのに。最近、変な夢を見る。中学生ぐらいのの男の子の声がして、酷い罵声が飛んでくる夢を。ちいさな女の子の夢を。そして、寂しい雨音と叫び声の夢を。きっとそのせいだろう。 気がつけば並木道は終わっていた。雛菊は「帰ろっか」と言った。うん。と頷き、その日は家に帰った。
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