梅雨の日

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梅雨の日

雨だ。ジメジメしていて外に出る気にはなれない。 この頃、ずっと雛菊は布団を被って見えない何かに怯えていた。 雨が怖いって言っていたが、それは本当らしい。子供心に深い傷を負えば、その傷はなかなか癒えない。僕はそれを、深く理解していた。 ひな、大丈夫?外に出なくていいんだよ。ご飯食べないと、元気でないよ。何か食べよ? そういうが、雛菊は布団にくるまってブルブル震えるだけだ。泣いているみたいだ。 「ねえ、、、ひな。ひなは、居なくならないよね?ずっと、わたしといてくれるよね、、、?もう私を、、、ひとりにしないで、、、。」 大丈夫。僕は雛菊を1人になんかしないよ。 死ぬ時は、僕も死ぬよ。 「ありがとうひな。励ましてくれるんだね。」 当たり前だよ。今じゃもう、雛菊の居ない人生なんかありえなくなったし。 僕は戸棚に入っているチョコレートを取り出し、雛菊の口へ運ばせた。 「ひな、ありがとう。甘くて美味しいな、、、。」 僕、チョコレート食べたことないからわかんないや。あんま好きじゃないし。 でも、雛菊が嬉しそうならそれでいい。笑ってくれればいい。一緒に死んでくれるなら、それでいいんだ。 泣き腫らした顔で笑う雛菊を、俺は飽きずにずっと見つめていた。
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