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翌日の昼、食堂に足を運ぶと、定位置ではレオが女子達に囲まれている。レオファンクラブの連中は、活字中毒としても有名なレオに、おすすめの本を聞くという口実で、ああして擦り寄る。その中に、香奈美の姿も見つけた。
これは付き合った後にわかったことだが、香奈美は面食いだ。だから俺から大学1の美男子に切り替えようと目論んでいるのだろう。まったく、つまらない女だと思う。
大学では極力人と関わらないようにしている俺は、ハーレムに背を向けて静かに食事をした。
放課後、誰もいない講義室の前を通りかかる。通りかかる際、ドア硝子の奥に知った顔を見つけて引き返す。改めて覗き込めば、レオと香奈美が向かい合っている。レオは香奈美を抱きしめ、キスをする。それは徐々に激しくなり、ふたりは求め合うように唇をぶつけあった。
俺は講義室からそっと離れ、足音をわざと立てて歩く。
「しかし、しかし君、恋とは罪悪ですよ」
夏目漱石のこころで1番有名なセリフを、熱っぽく言いながらその場を去った。
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