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「そんな、俺なんてまだまだですよ」
「ひとつ、お願いがあるのですが。この紙に“ごちそうさまでした”と書いてもらっていいですか?」
針金刑事は名刺サイズの紙とペンを俺の前に置いた。
「いいですよ」
俺は言われたとおりに、“ごちそうさま”と書いて針金刑事の前に置く。ついでに時計を見ると、講義が始まる3分前だ。
「すいません、講義があるのでそろそろ……」
「こちらこそお時間を取らせてすいません。どうぞ」
ずんぐり刑事はドアを開ける。
「しかし、しかし君。恋とは罪悪ですよ」
俺は熱演をすると、ドアを勢いよく閉めてから講義室へ向かった。
刑事達に話をしてから1週間近く経った日曜日、俺はとある人に呼ばれて洋館に足を運んだ。薄い灰色のレンガでできたこの洋館は、映画に出てきてもおかしくないほど立派で、近寄り難いほど神秘的だ。
門を抜けて玄関前で呼び鈴を鳴らすと、髪も服も真っ黒な、西洋人のメイドが出てきた。
「お待ちしておりました、坊っちゃまはいつもの部屋です」
「ありがとう」
俺は地下室に降りて、最奥にある重たい鉄錆のドアを開けた。瞬間、紅茶が香る。
「やぁ、和樹。待っていたよ」
坊っちゃまことレオは、紅茶を置くと片手をあげた。
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