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 残業が終わったのは、午前0時を廻ったころのこと。  木村さんは途中でカツ丼を食べだしたり、スマホゲームをしだしたり、奥さんと全然話が噛み合っていないテレビ電話をしだしたり、本当にどうしてそんなことができるのかと思うくらい、物凄くサボろうとしていた。  サボるというのは、そもそも誰かが代わりにやってくれる場合にやるべきものであって、今回の木村さんの仕事は木村さん自身に割り振られているのだから、絶対に自分で自分の首をしめているだけだってことに、早く気付いてほしい。  いや、なぜ気づかないのか。  (·····今日もこんな時間。回転寿司、全部閉まってるじゃないの)  私は駅に向かって歩きながら、ストレス発散を兼ねて、心の中にあるお寺―――つまり、これは私の妄想に度々登場するだけのやつ―――の境内にある鐘を思いっきり突いた。  ゴーーン。  (······今日もコンビニ飯か)    それは、平凡で、平和な私の日常。  こうやって時々、しょうもなく痛い妄想に浸ったりする余裕があるくらいには。  私の毎日は、ゆっくりと幸せに過ぎていたのだ。
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