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あれから二十年が経って、ピュアな初恋にときめいた私の存在は、完全に過去の出来事になっている。
それもこれも、こんな世の中じゃあ、仕方がない。
「········あ」
「――――あ」
社内不倫の現場を目撃したのは、今回で5
回目だった。
まじか。
―――入社5年目。安定の年一回ペース。
この会社の風紀は一体どうなってんだ。
確かに世の中には、色んな考え方の人間がいるのだと思う。だけど、不倫が間違っているとか間違ってないとかそういう話でもなく、シンプルに会社内でそういう行為には及ばないでほしい。
冬が近付くと、男も女も自制心てやつが弱くなるんだろうか。
「····あの。あさひ」
おずおずとした男の声が聞こえた。
こんなんだから、資料室がヤリ部屋ヤリ部屋だって言われるのだ。
「―――ごめん」
同期の瀬名秋久と経理課の才原千花子がなんとも言えない表情で、体を繋げたままこちらを見て固まっている。
結論として、私は無言のままパタンと資料室のドアを閉じた。
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