1,

1/4
1197人が本棚に入れています
本棚に追加
/467ページ

1,

 あれから二十年が経って、ピュアな初恋にときめいた私の存在は、完全に過去の出来事になっている。   それもこれも、こんな世の中じゃあ、仕方がない。 「········あ」 「――――あ」  社内不倫の現場を目撃したのは、今回で5 回目だった。    まじか。  ―――入社5年目。安定の年一回ペース。  この会社の風紀は一体どうなってんだ。  確かに世の中には、色んな考え方の人間がいるのだと思う。だけど、不倫が間違っているとか間違ってないとかそういう話でもなく、シンプルに会社内でそういう行為には及ばないでほしい。  冬が近付くと、男も女も自制心てやつが弱くなるんだろうか。 「····あの。あさひ」  おずおずとした男の声が聞こえた。      こんなんだから、資料室がヤリ部屋ヤリ部屋だって言われるのだ。 「―――ごめん」  同期の瀬名秋久と経理課の才原千花子がなんとも言えない表情で、体を繋げたままこちらを見て固まっている。       結論として、私は無言のままパタンと資料室のドアを閉じた。
/467ページ

最初のコメントを投稿しよう!