第二章 人は海から生まれ

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 君塚が吉原と呼んでいるのは売春街で、裏社会でも老舗が始めていた。 「……売春は地下社会のみでしょう?ここ、法律が生きているから」 「だから、境界線で営業しているのですよ。手入れがあったら地下社会に逃げ込む、地下社会には利益を半分渡している」  裏社会までは、通常社会の人間も普通に来られるので、客層のターゲットは通常社会の人間であった。 「ここも違反だと言いたいのか?」 「それだけではないのですよ」  君塚が、数枚の画像を見せてくれた。すると、そこには十津川と思われる人物が、寄り添って店に入ってゆく姿があった。 「十津川と、これは地下社会の重鎮の一人、鈴宮さんだね」  鈴宮は小柄な初老の紳士だが、好みはガタイのいい若者だった。 「もしかして、十津川が偶然に鈴宮に出会い、事態をややこしくしている……?」 「そうです」  十津川は、ここに監禁されているのは確かだが、そこには鈴宮が通っていた。
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