第三章 波音は心音に似ている

4/17
271人が本棚に入れています
本棚に追加
/378ページ
「夏目、あの車を止めろ」  椿生が走り出すと、正面に車が見えてきていた。俺はタイヤを狙って撃ってみたが、かなり堅い素材でできているようで、パンクにすらならなかった。そこで、音波銃を出すと、道路に撃ち込み、揺れでハンドル操作を不能にすると壁に突っ込ませておいた。  車からは、三人が飛び出てきたが、それはあっさりと君塚が捕まえていた。 「君塚、凄いね」 「でも、どこの者なのか、一言もしゃべらないのですよ……」  君塚は、笑顔でしゃがむと、一人の指を折っていた。 「指は十本ありますね……」  ボキリ、ボキリという嫌な音がして、歯を食いしばっていた男から、悲鳴が上がる。君塚は、次の指を持つと、もう一度、折ろうとしていた。 「……何で、俺達を狙ったのかな?」  君塚は笑顔のままで、次々と指を折ってゆく。周囲に悲鳴が響いているが、椿生は時計を見ただけであった。 「鈴宮は、裏社会で通常社会の人間を殺しているからな……警戒しているのでしょう」 「コレ、どうしましょう」  椿生は三人を見ると、舌打ちしていた。 「持ち主のいないゴミだろう?」 「わかりました」
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!