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第四章 人はいつか海に還ろう
十津川の乗っている車に追いついたが、それには鈴宮も乗っていた。
地下社会の重鎮の車となると、容易には止められない。しかし、追跡に気付いたのか、鈴宮の車が地下社会へと方向を変えた。地下社会に入ってしまえば、もう警察は追う事ができない。
俺は車に並走して走って貰うと、ヘルメットを取った。
「十津川、もう警察には戻らないのか?妻と子供を探さなくてもいいのか?」
返事など来ないと思っていたが、窓が少し開くと、十津川の目が見えた。
「俺は騙されていたのですよ……妻は他国の潜入捜査官で、俺は利用されただけだった……」
「でも、子供は、十津川の子供だろう?」
子供のDNAは調べられていて、十津川の実子であると確認されている。
「……もう殺されているでしょう……」
「生きていますよ。貴方の妻は、子供を殺されると知って、誰にも言えずに逃げたのです。貴方に言えば、貴方も殺されていた」
西海が、呟くように言っていた。
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