第三章 波音は心音に似ている

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第三章 波音は心音に似ている

 椿生が帰ってくると、リビングにいた俺を蹴り飛ばそうとした。俺は椿生の蹴りを避けると、ティッシュの箱を投げて、椿生の頭に当てておいた。 「おら、通常社会の連中が突入するだろう?こんなところで、何を相談している?」  椿生は、君塚の腕を掴んだが、君塚に投げ飛ばされていた。 「吉原に監禁されている十津川は、潜入捜査官で、嘉藤という政治家の不正を追っていた」  だが十津川は、素性がバレて吉原で薬漬けにされそうになった。そこに、相手を買いにきていた鈴宮が十津川を見つけ、自分の相手に指名した。  十津川が、嘉藤に殺されそうになっていたので、十津川を気に入った鈴宮は怒った。  嘉藤の孫は臓器を地下社会に依頼していて、飲み過ぎで壊した肝臓を、移植で交換する予定だった。  鈴宮は、十津川と嘉藤の孫を入れ替えて殺させた。 「だが、情報操作をしたのは、樹来々だ……」  事情がどうあれ、十津川は公安に戻したほうがいいだろう。会話は、全て安東に流しておいたので、向こうでも判断している筈だ。 「ううむ、これでゆくと、通常社会の人間を裏社会で殺して処分した、鈴宮もルールを破っているなあ」  しかし、鈴宮は地下社会の人間なので、安易に手が出せない。
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