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陽子は歩き出す前に買っておいた、おにぎりを食べた。
おなかがすいているような感覚はあまりなかったが、体力をかなり消耗していることは自覚できたので、なにかを摂取しなくては、という気持ちで食べた。
再び歩き出してしばらくすると、佐田からのメールが届いた。
『インター降りましたよ。陽子さんのいる場所から、1番近い駅わかるかな?』
メールの発信時間を見ると、10分前だった。
1番近い駅名をメールに書いて送ると、『車が停められるような場所で待っていてくれますか?』と、佐田からメールが来た。
陽子はコンビニを探しながら進んだ。
佐田のメールを受け取ってから1km以上は歩いたと思われる場所で、やっとコンビニにたどりつけた。
『駅前の交差点から、だいたい50mくらいの場所のコンビニにいるから。』
そうメールを送って、陽子はコンビニのトイレの列に並んだ。
10分くらい並んで、やっとトイレを済ませ、コンビニの外に出ると、コンビニの壁に寄りかかった。
寒さで、手がぶるぶると震えた。
ブーン、ブーン、ブーンと、聞きなれない音に、陽子も周りの人も、キョロキョロ辺りを見渡した。
次の瞬間、地面が大きく揺れた。
コンビニ周辺にいた人達は、騒然としていた。
地震は、おそらく震度5くらいだろうと思えた。
携帯電話の画面には、『緊急地震情報』の文字があった。
陽子は、佐田が乗っている車を知らなかった。
コンビニの駐車場に入ってくる車を見て、佐田を待ち続けた。
15分ほど待つと、がっちりとした体の大きい男性が、陽子に向かって歩いてきた。
175cmで、がっちりした体型の佐田。
「お待たせしました。」
「どうもありがとうございます。」
小さくうなずきながら、佐田は少し微笑んだ。
佐田の車は白だった。
この日、初めて知った。
陽子は助手席に座らせてもらい、車は出発した。
「すみません、すごく寒いんです。暖房つけてもらってもいいですか?」
佐田は、かすかにうなずくと、暖房を入れた。
道路はまだ渋滞していたが、流れていたので、少しずつだが進むことはできた。
佐田と私が会えたのは、地震発生から約7時間半たった、22:10だった。
陽子は、途中の休憩時間を抜かしても、約5時間半は歩いたことになる。
後から地図を見て知ったことだけれど、陽子はこの時、既に16kmも歩いていた。
この日、陽子が履いていた靴は、7cmのハイヒールだった。
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