プロローグ

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その日、陽子は家庭裁判所にいた。 長引く夫との離婚問題は、なかなか決着がつかず、陽子は離婚調停を申し立てた。 でも、それさえも、夫は出席しなかった。 「私は離婚するつもりはありません」という一文だけを、家庭裁判所に郵送したのだそうだ。 調停は、相手が出席しなければ終了してしまう。 しかし、ただ一つだけ進展できることがある。 それは…離婚裁判に進めるということだ。 そう、その日は、本人尋問のための出廷日だった。 2年ぶりに見る夫は、やつれたようだった。 でも、なんの感情もわかない。 家庭裁判所の同じ部屋にいて、同じ空気を吸っていることが、陽子にとっては苦痛だった。 この、先の見えない長いトンネルの中を、陽子はただ、ひたすらに走り続けてきた。 走っても走っても、出口がまったく見えなかった。
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