あの子がよかったんだよ

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「わっ! 子猫っ!」  見せ付けられた画面には、三匹の子猫が餌を食べる写真が収められていた。その傍らには、目つきの鋭い薄茶の毛色をした猫も映っている。 「そうっ! 子猫を連れて来てたんだよ!! すっごく可愛かったっ!!」 「そっか。姿が見えなくなっていたのって、子育てに忙しかったからなのね」 「そういうことだったみたい。しかもさ、オヒョウさんのお腹、ぺったんこでヒョウタン体型じゃなくなってたし……」  言われて改めて写真を見ると、確かに薄茶色の猫――、オヒョウさんは痩せ気味なスリムな体型をしている。  思うに、お腹だけがぽっこりと出ていたのは、妊娠していたからなのだろう。  結斗の家に来なくなったのは、子猫から離れすぎない場所を一時的な住み家にしていたから――。 「戻ってきてくれた上に子猫まで連れてきたってことは、先輩のお家が安心できる場所だって思ってくれたのね」 「へへ。そうだねえ。そう思うと嬉しいなあ」  事の真相が分かり、安堵と喜びが湧き上がる。  妙にスッキリとした気持ちでへらりと頬を緩ませて、結斗も彩白も笑い合った。
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