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「遅れましたが……。まさか納車より先に、自分がここに来るとは思いませんでした。……中途採用なのに部下がいるなど、驚いています。分からないことだらけでご迷惑をおかけするかもしれません。よろしく、ご指導ください」
容子に解放された二宮は、総務課員に向かって見事な作り笑いを浮かべた。彼の挨拶は課員を笑わせたが、新車選定の決定権を奪われた土橋だけは面白くなさそうな顔をしていた。
「二宮さんの部下になるみっちゃんは、管理部門では一番優秀な事務職なんですよ。会社の期待を裏切らないよう、頑張ってください」
三井が美智を紹介する。
「そうなのですか。みっちゃんさん、よろしくおねがいします」
二宮は、みっちゃんにさん付けして笑いを誘う。今度は土橋も笑みを浮かべた。
「二宮さん。みっちゃんに、さんは要りません」
美智は苦笑を消して席に着いた。社歴も年齢も上なのに、いきなり部下と呼ばれたことに複雑な思いはあるが、場を和ませようとする二宮の姿勢には好感がもてた。
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