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「はい。では、みっちゃん。仕事を始めましょう。僕らは何をすべきなのかな?」
正面に座った二宮に子供のような眼で見られた。その眼差しで、容子も母性本能がくすぐられたのだろうと思った。
「では……」と、1枚のレジメを差し出す。
「まとめていてくれたんだね。三井課長の言う通り、みっちゃんは優秀だ」
二宮が書面に視線を落とした。
「入居者の安全管理。家賃の回収管理。新規収益物件の入手など、いくつかやらなければならないことがありますが、最初にすべきことは資産管理係設置のきっかけになった入居者の安全管理だと思います。……定休日でも入居者の異常に対応できるシステム作りです」
「なるほどね。現状はどうなの?」
「それが分かっていないので、それを調べるところからかと……」
「よし。では行ってみよう」
二宮が席を立って廊下に向かう。美智は、慌てて後を追った。
「行くって?」
「もちろん。現場百回、論より証拠だよ」
「そんな、急に……」
美智が困惑しても二宮が足を止めることはなかった。
「営業はスピードが重要なんだ」
「私たち、営業じゃありませんよ」
「無から有をつくるのは営業と同じさ。変わるために大切なのは、行動することだ」
2人は会社を出ると、二宮の乗り心地の良い車でモチズリ不動産を訪ねた。
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