らくらく安全システム

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モチズリ建築は、郊外の田畑を開発してコンビニと高齢者向けのシェアハウスをセットで造る〝らくらくオーナー・システム〟という企画で業績を伸ばしていた。 ところが、世間で高齢者用賃貸住宅が増加すると空き室が増え、オーナーがパニックを起こす事態になった。それが緑中央銀行による不正融資も相まって社会問題化しかけたとき、NOMURA建設がそうしたシェアハウスを買い取って事態を収拾した。そのシェアハウスに入居者を斡旋、管理しているのがモチズリ不動産で、建物に導入されているセキュリティーシステムが〝らくらく安全システム〟と呼ばれていた。 「モチズリ建築の〝らくらく安全システム〟は万全ですよ。共用スペースはもちろん居室のドアや天井、家具などにセンサーが設置されていて、入居者が建物内のどこにいるのか、起きているのか寝ているのか、生きているのか死んでいるのかまでも、AIが検知、追跡しているんです」 モチズリ不動産の店長は、自信たっぷりに説明した。 「それでも小野塚ハル子さんの発見は遅れた」 美智が切り返すと、店長は顔を歪める。
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