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「異常があれば……」店長が事務所のパソコンを指した。「あれに通知があります。小野塚さんが倒れた日は、当社の定休日だったのですよ。システムは正常に動いていて、通知もありました。記録も残してあります。お疑いなら、お見せしましょうか?」
「記録があっても、助けてあげられなければ意味がないですよね」
「仕方がないではありませんか。我々が入居者の情報を管理しているのはボランティアのようなものなのですよ。24時間365日、パソコンの前に人を張り付けておくわけにはいきません。そんなことをしたら、年15百万前後のコストが増えるでしょう。それとも、オーナーになったNOMURA建設さんが、その費用を負担していただけますか?」
店長は眉を吊り上げて応じた。
「あ、いやすみません……」おっとりした口調で二宮が口を挟む。「……我々は内情を知らないので。……管理費用は受託している諸経費に含まれているのではないのですか?」
「とんでもない。諸経費は共有部分の光熱費や清掃費用だけですよ。シェアハウスの媒介業務を独占させてもらえることと、〝らくらく安全システム〟の監視はセットなのです。何分、モチズリ建築は親会社ですから断ることなどできない」
「モチズリ不動産にとって、シェアハウスの管理にはメリットがないということですか?」
「いや、多少の経費はいただいていますが、年間数万円程度ですよ」
店長は言葉を濁らせた。
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