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二宮が雪の残った駐車場に車を停め、2人はB棟の玄関前に立った。オートロックのマンション同様、スマートキーを持たない者は内部から開けてもらわなければならない仕組みだった。
インターフォンにはモチズリ不動産へつながるボタンもある。メンテナンス業者などが入る際、遠隔操作で鍵を開けてもらうためのものだろう。二宮が即座にそのボタンを押した。しばらくすると「何の御用ですか?」と返事があった。先ほど会った店長とは異なる声だ。二宮は壁のカメラに向かって名乗り、倒れた小野塚ハル子さんの件で中に入りたいと告げた。
ウィーンと鈍い音がしてドアが開く。
「ありがとう」
二宮が礼を言ってエントランスに入った。美智も続いた。
「モチズリ不動産の定休日や深夜は、誰も入れないのかな?」
二宮が振り返って閉まるドアに眼をやった。
「入居者が開けてくれなければ、そうなるでしょうね」
「なるほど。マンションと同じだと思えばいいのか……」
二宮が見上げる。エントランスは高級マンションさながらで、3階まで吹き抜けになっていた。正面には明るい中庭が見える窓があり、右側には上階に続く緩やかな階段とエレベーターがあって、リビングへ続くガラスドアが左側にあった。
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