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「打ち所が悪かったのだろう。高血圧で倒れた時に腰も痛めたようだ。おまけに子供が見舞いに来た気配もない。あれじゃーなんだ……。病気も長引くわなぁ」
山田が言った。
「それで、大家さんが何の用事なんだい。まさか、追い出そうとしているんじゃないだろうね?」
絹子と山田が勝手に話を進めていく。
「なんだと!」
絹子の疑問をどう解釈したのか、山田が大声を上げてテーブルをたたいた。解放された美智の手の中に温かい大福餅が残され、室内の老人たちが一斉に山田に眼を向けた。
「大家は親も同然。店子は子も同然というのに、病気になったから出て行けというのか?」
「とんでもありません」
美智は胸元で両手を振る。左手には大福餅を握っていた。
「小野塚さんは皆さんが気付いてくれたから助かりました。でも、これから同じようなことがあった時にも誰かが見つけてくれるという保証はありません。それで私たちは、〝らくらく安全システム〟の見直しのために伺ったのです。協力してください」
山田とテレビの前の老人たちに美智が頭を下げる。
「本当なんだね?」
絹子の問いに二宮が頷いた。
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