136人が本棚に入れています
本棚に追加
「システムなんて、結局、機械がすることだろう? 人間の面倒を見られるのは人間だけだ」
「山田さん。立っている者は親でも使えというでしょ。機械だってうまく使えばいいんだよ。……協力って、何をすればいいんだい?」
「それはまだ分かりませんが、大家としてできることをしたいと思います」
二宮の応えで室内の緊張が解けた。
美智と二宮は、絹子の案内で施設内を見せてもらった。モチズリ不動産で説明を受けたように建物内には様々なセンサーがあって、居室の表示パネルには在室者の人数や呼吸の有無まで表示されている。
「小野塚さんは、普段から鍵をしない人だから助けられたのよ。高血圧で倒れるかもしれないと思っていたんじゃないかしら?」
絹子は、自分の部屋のドアの鍵を開け閉めしながら説明する。電子錠が作動する都度、表示パネルのランプの色が変わった。
「内側から鍵がかかっていたら、どうやって入るんですか?」
「不動産屋に鍵をもってきてもらわないとねぇ」
美智の質問に絹子が応えた。
「そんな悠長なことができるか。外側からガラスをぶち破るしかない」
いつの間にか廊下に立っていた山田が言った。
「まぁ、8割の人は、室内にいる時は鍵をかけないと思いますよ。みんな、気心が知れているから」
絹子が微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!