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「帰ったらどうだい? みっちゃんは働きすぎだ。毎日、パソコンも持って帰っているじゃないか。自宅でサービス残業をしているんだろう? たまにはパソコンから距離を置いたらどうだい?」
「そうなんですけどね……」
二宮の言葉がきっかけで、机の上の違和感の理由に気付いた。ノートパソコンに並べて置いた〝らくらく安全システム〟のマニュアルがどけられていたのだ。
誰がマニュアルに触れたのだろう? 些細なことではあったが、気になった。……ぐるりと室内を見回すと初瀬と視線があう。
「ごめんなさい。続きをしましょう……」
美智は席を立って初瀬の隣に移動し、帳簿より資材が少ない時の除却処理の説明を始めた。
ピピピピピ……、総務課のメンバーのスマホが一斉に鳴った。〝らくらく安全システム〟のアラームだ。真っ先にシステムの画面を開いたのは二宮だった。
「みっちゃん。吉倉ハウスの山田さんだよ。AIが室内で倒れていると判定している」
「間違いないですか?」
「ああ、床の上で動かなくなったようだ。体温はある。呼吸は微弱」
美智は目の前の受話器を取って1・1・9とダイヤルボタンを押した。
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