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「酔いつぶれているんじゃないのか?」
土橋の声を無視し、救急車の出動を要請する。
「たとえそうだとしても、行ってもらうべきですよ」
美智が考えていたことを二宮が言った。脳裏を山田に握らせられた大福餅の柔らかな感触が過った。
「僕も吉倉ハウスに行ってみる。入居者が不安な気持ちでいるだろうから」
「救急隊が着いたら、私がロックを解除します」
ドアに向かう二宮に、美智がスマホを掲げてみせた。
「私も様子を見にいくわ。シェアハウスも見ておきたいから。初瀬君、後をよろしく」
決算の仕事に飽きたのだろう。容子が二宮を追った。
「仕事の成果が確認された。おめでとう……、そう言うと不謹慎かな」
三井が、美智を見ていた。
「ありがとうございます。山田さんが無事だったら、おめでとうでいいと思います」
美智が応えると、三井が頷いた。
「営業課にいた時には分からなかったけど、みっちゃんは大変なんですね」
初瀬が〝らくらく安全システム〟が表示された美智のスマホを覗き込んでいる。
「でしょう。獅子奮迅、快刀乱麻。私、先輩を尊敬しているんです」
話に割り込んだ皐月がマカロンを頰張った。
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