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翌週の役員会では、管理部門担当の松井から決算の進捗状況が報告された。たった3カ月分ではあるが、シェアハウスの賃貸収益も売上高の増加に貢献していた。
『シェアハウスの〝らくらく安全システム〟が改善され、先週、1人の老人の命が救われました。そのシステムを、今後企画するマンションや住宅のセールスポイントにしてはどうでしょうか!』
〝らくらく安全システム〟の効果を報告する松井の声には勢いがあった。
『ヨシッ! 目論見通りだ』
松井に応じる社長の声も普段より大きい。思わず美智がヘッドフォンを外したほどだ。瑞穂が社長の望みどおりに「ぎゃふん」と言ったかどうかは分からない。
「社長ったら……」
パジャマ姿の美智はベッドに足を延ばしてくつろいでいた。耳には会社で使うイヤフォンとは異なる感触の優しいヘッドフォンを着け、膝の上にノートパソコンを置いている。〝らくらく安全システム〟のスマホアプリ開発にあわせ、自宅からクラウドに直接アクセスできるよう、システムMに盗聴システムのプログラムを改良してもらったのだ。
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