第一夜「遭難」

2/18
前へ
/189ページ
次へ
──八月十日/某県R山にて  大粒の強い雨が霧を伴って山に降り注ぐなか、雨の轟音に紛れて一人の女性の名前を呼ぶ声がかすかに聞こえる。  何十人ものカッパを身に付けた捜索隊が一人の女性を探していた。  すると、大木の下に生い茂る草むらに向かって一匹の捜索犬が吠え続ける。  捜索隊の一人が犬のもとへ駆け寄ると、犬の視線の先にある草むらを急いでかき分けた。 「おーい! こっちだー! みつけたぞー!」 「舞永(まいなが)さん! なにか見つけたそうです!」  “舞永”と呼ばれた男性は、名前を呼ばれて振り返ると顔を曇らせた。 d280ee4b-0f87-4b51-9d35-d3060af6c7ed
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加