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友彰がバスの車窓に目を移すと、景色はいつのまにか市街を抜けて高速道路に戻り、似たような緑の景色が流れていく──
しばらくして、同じ景色を眺める事に飽きたのか、月麦はそこで初めて通路を挟んだ隣の席に顔を向けた。
すると、それまで半開きの目だった月麦の目は大きく開いて丸くなり、一点の方向を凝視する。
友彰は急に顔色を変えた月麦の視線の先に目を向ける。そこには先ほど友彰の落し物を拾ってくれた女性のそばに大きなぬいぐるみが置いてあった。
──それを見て友彰は察した。
──月麦の“マイブーム”を。
女性は隣から発する二人の視線に気がつく──だが、注がれた二人の視線は自分にではなく、隣に置いたぬいぐるみに注がれてる事に気づいた女性は困った表情を浮かべた。
「どうか……しました?」
「い、いいえ。なんでもありません」
友彰は隣の女性と目が合うと、不審者と思われてるだろうと思い、やむをえず事情を説明した。
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