59人が本棚に入れています
本棚に追加
/189ページ
***
友彰の妻・葵が他界してから一年。娘である月麦は今日で七歳の誕生日を迎える。
月麦が前から行きたがっていた某テーマパークに、友彰が当日券を買おうとすると、もうすでに大行列が購入窓口に出来上がっていた。
更に最悪なことに大行列に並んでる間に入場制限がかかってしまい、パーク内に入る事さえも叶わなかった。
娘のご機嫌を取ろうとした友彰は、こっそりと買っていた月麦のお気に入りマスコットキャラクターのぬいぐるみを、しかめっ面の月麦にプレゼントした。
が──
──ぷい。
月麦のしかめっ面は消える事なく顔をぬいぐるみから背けた。どうやら娘のマイブーム期限は過ぎていたらしい。
……娘の情報網を掴む事に失敗。
……慣れないチケット予約も失敗。
せっかくの休みの日に出かけた旅行が、最悪な日となった二人は帰りの夜行バスに乗ってから一度も会話をしていない。
(このやるせない気持ちをどこにぶつけたらいいのだろう……?)
友彰はバスに揺られながら天井に想いをぶつけた。
最初のコメントを投稿しよう!