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ちゅん、ちゅん、ちゅん、ちゅん。
翌朝になった。
台風一過の燦々と太陽が照りつける晴天の下。
近くのコンクリート製の鉄塔が台風の激しい暴風に煽られ直撃して大破した家屋が、その無惨な醜態を晒していた。
「兄ちゃん!!苦しいよ!!」
「俺は大丈夫だ!美憂。でも・・・父さんと母さんが・・・」
「ええっ?!」
倒れた鉄塔の下敷きとなり、瓦礫と化した家の中の兄妹は、奥で呻いている両親の声を聞き卒倒した。
「た・・・助けて・・・」
「く・・・苦しい・・・!!」
「父さん!母さん!」
「開人か・・・お前らは大丈夫なのか・・・」
「うん・・・大丈夫。でも・・・」
無惨に潰された家の空調は、台風による送電線の倒壊で電気が通らず、照りつける太陽の熱で灼熱地獄と化していた。
しかも、両親は家の奥の瓦礫で出口が塞がれた居間の中で缶詰となっている。
「何とか僕らだけ出て、何とかここから皆逃げて・・・えっ?!」
開人は絶句した。
「俺らも此処から出られない!!」
「兄ちゃん!!どうしよう!!」
みしみし・・・みしみし・・・
鉄塔の重みで、じわじわと家が押し潰されていく。
「兄ちゃん!!怖いよーー!!」
美憂は、開人を抱き締めて大声で泣きわめいた。
「ばうっ!!ばうっ!!ばうっ!!ばうっ!!」
その時だった。
壊れた窓の間から、愛犬のリューが鼻面を突き出して兄妹に向かって吠えたてた。
「リュー・・・無事だったのか・・・そうだ!!」
開人は、思い付いた。
ごそごそごそごそごそ・・・
「何してるの?兄ちゃん?」
開人は、ぺちゃんこの勉強部屋から徐にノートの切れ端とペンと紐を持ち出してきた。
「美憂、俺らにはこいつしか頼みの綱が無い。
今調べたが、この家の電話も携帯もスマホも使えない。
なら、リューに頼めばいいじゃないか。
誰かへ助けを呼びに。」
「リュー・・・」
開人は、よれよれのノートの切れ端にペンで何かを書いて、リューの首輪に紐でくくりつけた。
「行け!リュー!!俺らの為に!!」
開人は壊れた窓から手を伸ばし、リューの鼻面を撫でると、
「うおおおーーーーん!!」
と、リューは遠吠えしたかと思うと、ダッシュで何処へと駆けていった。
「頼むよ・・・リュー・・・」
リューは何処までも駆けた。
首輪に紐でくくりつけた、託された手紙を揺らして。
開人はその手紙に、住所と共にこう書いた。
≪助けてください!!
家族4人が台風で倒れた鉄塔の下敷きになっています!!
それに、この街には他にも鉄塔の下敷きになっている住民が居ます!!
もう体力が限界です!!
ついでに、この街には水道も電気も来ていません!!
救援物資もお願いします!!≫
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