stigma

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振ると痛む頭を抱えながら水を求めてキッチンに向かった。目の前のダイニングテーブルの上に小さな紙片があった。 何だろう、テーブルの上にはものを置かないようにしてるのに。昨日酔っ払って捨て忘れたレシートかもしれない。 そう思いながら手に取って開くと、手書きのメモだった。 行間をたっぷり取りながら、のびのびとした字がバランスよく配置されている。 二日酔いの天羽さんへ おはようございます、熊谷です。 びっくりさせていたらすいません。 一応お知らせしますと、酔っていたのでポケットから鍵を出して開けました。 脱がせたシャツとスラックスは洗濯機のところに掛けてあります。 部屋を出る時は、鍵を閉めて郵便受けに入れておきます。 お大事に 読みながら顔がかっと熱くなる。二日酔いのせいじゃなくても頭がガンガンと痛くなってくる。 大失態だ。外部の人に冷たい対応をしているところを見られるどころの比じゃない。最悪だ。部屋まで上がって世話をされたなんて、どれだけ酔っ払ってたんだ。間抜けすぎる。 きっとお礼もちゃんと言ってないだろう。 なのに、同時に世話をしてもらったことを考えると身体の奥がくすぐったくなってくる。 ちがう、彼は誰に対しても親切で面倒見のいい、ただの同僚だ。そう否定しても、心が勝手に喜んでいる。 メモを読み直して、眉を寄せた。 脱がせたシャツ? とスラックス? 熊谷の顔が浮かんできた。気がつくと笑顔で距離を詰めてくる、憎めない図々しさ。 その温かさはすぐに恥ずかしさでかき消され、身体中が熱くなった。 だめだ、何も期待してはいけない。 彼は:普通!の人だから、部屋の中まで入ってきたし服だって脱がせてくれたんだ。もしも僕が女だったら、そんなことはしないだろう。つまりそういうことだ。 別れた恋人に似ているからって、僕が意識しても、どんなに望んでも、手に入る訳はない。そもそも恋愛対象の選択肢に入らないし、僕みたいな面白みのない人間は友達にすらなれないだろう。 酒に酔って送らされた迷惑な同僚、それがせいぜいだ。 強く自分に言い聞かせてもう一度目を閉じた。ねっとりとした気持ちを断ち切るように頭を振ると、がつんと殴られたような痛みが走る。 二日酔いだ、飲み過ぎたんだ。全部、自分が悪いんだ。そう考えて気分がますます落ち込んでいく。 落ち着いて、深呼吸を繰り返し意識して肩の力を抜いた。頭の痛みも気分も、いくらか楽になった。
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