a cup of coffee

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エレベータの扉が閉まるのを確認してから自分の席に戻ると、隣でデザイナーの吉本が大きなモニターとにらめっこしながらポスターを作っていた。集中している時に声をかけると嫌がられるので、天羽は黙って椅子に腰掛けた。 吉本は美大出身で、よく言えば天然キャラ、社内でもエキセントリックな社交家として通っている。天羽より二歳年長の彼女は、広報の経験もこの会社での在籍期間も長い。初対面からタメ口で話しかけられたのには面食らったが、年齢も性別も気にせずに話ができる相手だった。天羽がゲイであることも感づいているようだが、不用意に踏み込むことなく接してくれるので気が楽だった。
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