トイレの…

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トイレの…

 外れ掛けている玄関の戸の隙間から中へと入り込んだ三人は、元気娘が持参した小型の懐中電灯で辺りを照らしながらトイレへとやって来た。 「さあ、出るかしらね」 「噂は噂だから…」 「きゃっ!?」 「どうしたの!?」 「虫が…」 「もう、そんなのあちこちにいるじゃない…」 「気持ちは分かるわ…」  中を照らし、歩みを進める元気娘・奈々[なな]。  そんな時、気弱娘・莉奈[りな]が小さく悲鳴を上げた為、奈々は身体をビクつかせながら振り返り理由を訊ねた。 理由に呆れた奈々に返すように、大人びた娘・美奈[みな]は莉奈をフォローした。  溜め息を吐きながらも、奈々はゆっくりと中へ足を踏み入れ、個室を一つ一つ確認して行く。  このトイレでの噂。  学校が、まだ生徒も多く賑やかだった頃、一つの事件が起こった。  夏休み直前の早朝に、一階中央にあるこのトイレの前から四番目で、ある男性の首吊り死体が見つかったのだ。 見つけたのは用務員の男性で、発見が早かった為、警察は来たものの幸いにも子供達に見つかる事は無かった。  しかしその日から、何故か事件を知らない子供達の間でトイレの四番目に男の霊が出るという噂が流れ始めた。 何度か教師が調べた事はあったが、それを見ることも確認することも出来なかったという。 「何で女子トイレに男の霊が出るのかな?」 「さあ…?」 「ある終業式の日に、女子トイレで男の人の死体が見つかったとか…。先生達が隠したから、生徒には気付かれなかったみたい」 「ん?何で美奈がそんなこと知ってるのよ?」 「こういう話が好きな子に聞いたのよ。この学校の噂は全部その子から聞いたの」 「へ~、その子って…嫌っ!?」 「どうしたの!?」 「な、何!?」 「今、誰かにお尻触られた気がして…」 「え!?」 「誰かって…、奈々の後ろは噂のトイレよ?」  美奈の言葉に、奈々はゆっくりと懐中電灯をトイレへ向けた。  しかしそこには、もう何年も使われて無い洋式トイレが蓋を閉じた状態で鎮座しているだけだった。 「誰も居ないよね…」 「う、うん…」 「きっと、何かにぶつかったのよ」 「そうかな…」 「ここの噂はただの噂だったみたいね。さ、次へ行きましょ」 「そ、そうだね…」 「うん…」  奈々はいまいち納得いかなかったが、実際に噂の男の霊も現れなかった為、二人に続いた。  その時、後ろから何者かの声が聞こえて奈々が振り返ると、そこにはうっすらと白いひとがたのモヤがあり、奈々は思わず叫んだ。  しかし声は出ておらず、気付けば奈々の体は白いモヤに包まれていて、身動きすらとれなくなっていた。 (美奈…、莉奈…、たす、けて…)  奈々の声は二人に届かず、手からは懐中電灯が零れ落ちた。 ガチャン 「「え?」」 「奈々…?」 「え?え?奈々ちゃん…、どこ?」 「莉奈、トイレのドアが…」 「え…、閉まってる…。あ、まさか!!」  落ちている懐中電灯を拾い上げた美奈は、莉奈と一緒に先程まで開いていた噂のトイレを見つめた。 「奈々ちゃん、居るなら返事して!!」 「っ、開かない…」  突然姿を消した奈々が、男の霊が現れると言うトイレに閉じ込められたと考えた二人は何度か戸を開けようと試みたが、固く閉ざされていて開けることは出来なかった。 「携帯も通じないし…、こうなったら…」 「美奈ちゃん、どうするの…?」 「何かドアを壊せそうな道具を探してくるわ!莉奈はここで待ってて」 「え…、美奈ちゃん危ないよ!!」 「仕方無いでしょう?私が誘って、こんな事になったんだから…」 「なら、私も…」 「奈々が出てきた時に入れ違いになるといけないから、莉奈はここで見てて欲しいの。無理にとは言わないけど…」 「…分かった。待ってるね」 「ありがとう…」  莉奈の言葉に笑顔を浮かべると、美奈は懐中電灯を持ってトイレを後にした。  一人残された莉奈は、携帯の明かりを頼りに、閉じられたドアの前で奈々と美奈の無事を祈った。  美奈と莉奈の二人が別れた頃、白いモヤにトイレの中へと引き込まれた奈々は、蓋が閉じたままの便器の上に座らされた状態で金縛りにあい、動けずにいた。 (本当に…、いた…)  奈々を引き込んだ白いモヤは、奈々を座らせると一旦離れ、まじまじと見つめる仕草を取り始めたのだ。  その内に、だんだんと輪郭がはっきりし始め、男である事が分かった。  男は何か考えるようにうろうろと動き回っていたが、しばらくすると奈々の目の前にしゃがみ、そっと手を伸ばしてきた。 その事に恐怖を感じ思わず目を瞑ろうとした奈々だったが、次の瞬間、太ももの辺りに何かが触れた感じがして視線をそちらへ向けた。 スッ (怖い!………え?) サワッ (なっ!?)  奈々が目にしたもの。 それは、しゃがんだ男が奈々の太ももを撫でている姿だった。  服の上からでもはっきりと手の感触が伝わり、奈々は思わず声を上げた…筈だった。  しかし声は出ておらず、焦りながらももう一度声を出してみた。 けれどやはり声は出ず、自分に起きている異変に戸惑い始めた奈々。  そんな奈々に気付いたのか、男は一度だけ奈々へ顔を向けると口許を歪め、再び手を動かし始めた。 その手は段々と股の付け根まで這ってきて、恐怖と恥ずかしさから奈々は目を瞑った。 (いや………え?あっ!?)  股の付け根まで来ると、男は突然動きを止めた為、奈々は思わず男へと視線を向けた。  瞬間、男の指が服を擦り抜けて奈々の大切な部分に直接触れてきたのだ。  恐怖と嫌悪感に奈々は必死に藻掻いたが、身体はピクリとも動かず、声も出せず、ただ目だけが男の動きを見つめるだけだった。  歪んだ笑みを浮かべたままの男は、奈々の様子を見つめながら指を動かし、何かを探している素振りを見せた。 (ん…、やぁ…、なんで、こんな事…) ピクッ (え?何、今の…ああっ!!)  見ず知らずの男に自分でも滅多に触れない所を弄られ、ナカを掻き回され、指を抜き挿しされ、広げられる。 そんな状況に奈々の心は憔悴し始めていた。  けれどある部分を指が掠めると同時に身体が反応し、自分でも何が起こったのか分からず驚く奈々。  男は奈々のそんな身体の異変に気付くと執拗にその部分を弄り始め、何度も責められる内に奈々の意識は段々と薄れ始めた。 (…な…に…、んっ…これ……。あ…、もう………え…?)  奈々が完全に意識を失くす直前に男は指の動きを止め、ゆらゆらと立ち上がった。  それからスゥッと奈々に近付くと、奈々の両足に手を掛け持ち上げた。  衣服を身に付けたままとは言え、男に向かって両足を広げた状態、しかも今の今まで下半身を弄り回されていたこともあり、恥ずかしいと感じた奈々は何とか逃れようと暴れた。  しかし金縛りは未だ解けておらず、徒労に終わった。 (一体、何す…) ヌチュ (…え?う、そ…、い、嫌…)  暴れるのを諦めた奈々が男の行動の意味を考えていたその時、先程まで弄られていた部分に何かを挿れられている感触がして目を見開いた。  そして自分と男の体勢からそれが何かを察した奈々は、声にならないのを知りつつも叫び始めた。 (嫌ぁっっ!!!助けてぇぇ、美奈ぁ!!気付いてよぉ、莉奈ぁ!!)  奈々の心の叫びは漏れる事無く、その間も男は腰を打ち付けるように動かし続けていた。 ガンッ バキッ 「大丈夫、奈々!?」 「奈々ちゃん、しっかりして!!」 「…ん、美奈に莉奈…。あれ、私…」 「このトイレに閉じ込められたのよ!!」 「そうなんだ…」 「覚えてないの?」 「うん…」 「とにかく、ここを出ましょ」  美奈と莉奈に手を引かれ、トイレから助け出された奈々。  二人は何があったのか訊ねたが奈々はトイレでの記憶を失っていて、何も聞くことは出来無かった。  美奈は自分のせいだと謝り帰ろうと言い出したが、奈々は探検は始まったばっかりだからと続ける事を要望。 二人の話を聞いていた莉奈は、奈々が平気ならと答え、奈々は自分は大丈夫だからと半ば強引に続行が決まったのだった。 (そう言えば、何か忘れてる気がするな…) 終わり
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