誕生日イブは眠れない

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 しかしそれは去年までの話だ。蒼世は今年こそ、と心に決めていた。密かに実行すると言いたいところだが、布団に入って寝たふりをしていたら、去年はそのまま本当に寝てしまった。だから今年は家族にも十二時まで起きていると宣言した。  明日も学校があるので反対されるかと思ったが、両親も姉もあっさりとやってごらん、とうなずいたので、蒼世は拍子抜けしてしまった。無口なおじいちゃんは賛成もしないが反対もしないし、おばあちゃんにいたっては、末っ子の蒼世がやろうとすることはいつでもなんでも、「蒼ちゃん、すごいねえ」と目を丸くする。もちろん今回だって同じだった。  今年は昼寝もした。家族にも起きている、と宣言したので、リビングに居座ってテレビを見ている。準備は万端だ。  中学生のお姉ちゃんは十一時になるとすぐに「部活の早朝練習があるから、私は先に寝る」と立ち上がった。しかし自分の部屋に行く前に、暇つぶしに、と言ってマンガを貸してくれた。蒼世はありがたく借りたものの、チラリと見た表紙には興味が湧かなかった。それよりも……、 「お姉ちゃん、スマホ(スマートフォン)貸して」 「ダメ」  スマートフォンのアプリでゲームをしていれば起きていられると思ったのだが、即答で断られた。残念。
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