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借りた漫画は読んでみると意外にも面白かった。最後まで読み終えると、十二時まであと三十分だった。あと少しなのに蒼世のまぶたは上下が仲がいいらしい。すぐにくっつこうとする。
「もうダメだー」
「別に眠いなら寝たらいいじゃない」お母さんが笑う。「お母さんとお父さんももう寝るよ。蒼世も今日はもう寝て、明日スッキリ誕生日を迎えればいいじゃない」と誘惑してくる。一緒に起きていてはくれないらしい。
お父さんとお母さんが寝てしまったら、家の中はしん、とするだろう。少し怖い。
「寝ていいよ。一人で起きているから」
蒼世はなるべく平気な顔をして言った。
もしかしたら、怖くなったら目が覚めるかもしれない。
しばらくして「テレビの音は大きくしないように」と言い残して蒼世の両親が寝てしまうと、電気が点いているのに、家じゅうが暗くなったような気がする。正直言って怖い。
「でもあとたったの二十分だ」
蒼世は自分を勇気づけるように口に出していった。しかし失敗だった。夜、たった一人の家の中で、自分の声を聞くのは怖いということを蒼世は始めて知った。
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