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誕生日イブは眠れない
蒼世はもうすぐ十二歳になる。正確にはあと、一時間五十七分で。
十時というのは、十一歳にとっては境目の時間だ。早寝の子供はとっくに夢の中だし、遅寝ならまだ起きている子供もいるだろう。そして蒼世は早寝のクチなので、いつもなら寝ている時間だ。
毎年、誕生日を迎える瞬間を寝ないで迎えてみたくて、なんとか眠らずにいようとがんばってみるのだが、去年まではいつの間にか眠ってしまって、気が付けば誕生日の朝だった。
その原因は、蒼世の家の夜が早いというところにある。同居している祖父母の希望に合わせて、六時すぎには夕食。それからおじいちゃんから順番にお風呂に入る。蒼世の順番は二番目だ。子供だから早く寝るように、とおじいちゃんの次なのだ。
夕食を食べ、お風呂に入るともう眠くなってしまう。だからいつも九時半には布団にもぐりこむ。学校で話題のテレビ番組がある日だけは少し遅いがそれも十時までだ。だから十時までは起きていられる。
それなのに、あと二時間がどうしても起きていられないのだ。
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