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祖母から手紙が届いた。先月、子どもの写真を送ったのでそのお礼の手紙だ。読み終えた手紙を捨てるのは嫌だけど、大事にしまっておいても二度と見ないなら同じだと思った。
ちょっと思いついて、2枚の便せんを上から三角に折って、はみでた部分を切り取った。ちょうど、何も書いていない部分だった。
改めて手紙に書かれた文字をよく見た。昔より、ちょっと下手になった字。文面を読めば頭はまだしっかりしているように思えた。
それを文字がよく見えるように、たて横半分に折って折り目をつけた。
この字は祖母にしか書けない。だからこれは、祖母だけの柄なのだ。
結婚したとき、結婚式をする代わりに手紙を出した。死んだじいちゃんとの思い出を3行書いた。「手紙を読んで3回泣いた」という話を10回していたと、父が言っていた。
祖母からの手紙を、折り目に合わせて折って、それから3cmほど斜めに折る。
人生はきっと、折り紙のようなものだ。生まれつき持っている色は決まっている。できるのは、ちょっと絵を書き足すくらい。ただ、ピンクのカエルがいてもいいし、緑のハートがあってもいい。
生まれつき紙の色は決まっている。それを手間ひまかけて折り線をつくって、つぶしながら折ってまた開いて、うまくできた隙間に差し込んで強くして。見栄えを気にして少し内側に折り込んで。進んでいるようで戻っているようで、それを繰り返しながらやっと一つの形に成る。
出来上がっても時が経てばまた崩して、必要な形を作って…
今日、祖母の手紙で作ったのは1足の靴だ。
片方の靴底には「婆ちゃんより」片方の靴底には「友香ちゃんへ」と書いてある。それを大事に持って2階にあがり、化粧棚に飾った。
それは、歩き出すための靴なのだ。祖母は手紙の中で、私が自分の人生を歩むための許可をくれた。家族の中で一番に私の苦しみを理解してくれたのはいつも祖母だった。
だから、例え他の誰がどう思ったとしても、祖母が応援してくれるなら、私は歩き出せる。祖母の手紙はそのための靴なのだ。ありがとう、おばあちゃん。
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