ティエラは怒っていたのか

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ティエラは怒っていたのか

 月明かりの下で私は死んだ。  静かな、あまりに静かな死の訪れは、悲しみも、怒りも、恐怖もなく、ただただ穏やかに打ち寄せる波のようだった。  だが、最期まで後悔だけは付きまとった。あの時、ああすれば良かったのではないか。違う選択をしていれば、こんなことにならなかったのではないか。  それも、まあ、致し方ない。後悔とは、結果を知ったうえでする事だ。どうなるかなど、誰にも解らない。解っていれば、間違った選択などしないだろう。  常に最善と思われる選択をしてきたつもりではあった。たとえそこに、私ではどうにもならない不可抗力が加えられたとしても、なんとかなるだろう、今までだってなんとかなってきたのだから、と。  どうやら「なんとかなる」のは、回数制限があったようだ。今になってやっと解った。今回はもう、どうにもならなかった。ただそれだけの事だったのだ。
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