私の能力のこと

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私の能力のこと

あのとき、見知らぬ誰かに助けられたのは、姉と兄だった。 姉と兄は、毛並みもよく、美猫だった。鳴き声も雨のなかでも大きく響いていた。 だから、降りしきる夜の雨のなか、見知らぬ誰かに快くもらわれていった。 しかし、私は、姉や兄と違い、もう命が尽きかけていた。だから、鳴くこともできずに、拾われることもなく段ボールのすみに蹲っていた。 そして、段ボールごと雨に流されてしまった。 せめて、姉と兄はきっと幸せに暮らしたのだと信じたい。 降りしきる雨に著しく体力を奪われ、もう息も出来ない。 産まれてから約2ヶ月。 あっという間の人生(?)だった。 もう眼も開かない。 そんな時だった。 私は明るい世界にいた。 「そなたは、あの人間の願いを受けたもの。命がその都度尽きようとも、転生して彼を見続けよ。」 と、白く輝く翼の生えた女性に言われた。 さらに、 「さらに、そなたの眼に、祝福を与える。」 と言った。 あの人間がみているものが、私にもみえるようになっているようだ。 それからしばらく天国で暮らしていたが、日に日に響留の事が気になっていた。 その後、ネコ種を変えて名前を変えて、私は響留と暮らすことになった。 ある時は、シャムベースのミックスで、名前はルイ。 ある時は、クロネコで、名前はクロ そして今は、マンチカンのブラウンタビーロングヘアー。平たく言えば、足は短く、茶系のべっ甲柄、長い毛が特徴だ。それから、今の名前はくるみ。 幸いなことに、どのときでも、身体は私本来の女で生まれ変わっている。 それから響留 あのとき、空を見上げて、祈ってくれてありがとう。 祈りは、しっかりあのお方に届いたよ。
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