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恋事
響留は、遊ぶことや、みんなで楽しむことが苦手だ。
フルート奏者になってからは特にそうだ。
遊ぶ時間があれば、それをフルートの練習に費やす。自虐的なまでに。
私がシャムベースミックスのルイだった頃の話だ。
ある時、響留には自分から好きになった女性がいた。それは同じフルート奏者だった。
きれいな人だった。
響留はすごく好きになったけど、相手はそうではなかった。
プレゼントしたり、お手紙かいたり。
彼女が少し病弱だったことが、幼少時の自分と重なったのだろうか。一歩間違えば、ストーカーと言われかなねないレベルで、彼女の安否を気遣っていた。
でも、ある日、彼女はフランスに留学することが決まった。
彼女の彼氏とともに。
それまで、響留は彼女に彼氏がいることを知らなかった。
フツーなら、怒るところかと思う。
フツーなら、早くそれを言えって言うと思う。
でも、それを彼女から聞いた響留は、笑顔でそれを聞いて、笑顔で見送った。
その後で、自宅で散々泣いていた。
「まぁ、仕方ないよね。
僕には留学するお金もないし、車も乗れないからね。
それに、気の効いた遊びに誘うことも苦手だしね。
好きな人と幸せになることを願うのも、大切だよね。
でも、ちょっと寂しいよ。」
といって、私を抱っこするのだが・・
私の立派な毛並みがあんたの涙で汚れる!
と思って、やや不機嫌に鳴いてみたが、響留は泣き止むことはなかった。
・・仕方がない。
今日だけは多目に見てあげる。
響留はバカだ。
響留はお人好しだ。
でも、そんな響留が好きだ。
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