拙速ラブレター

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扉を開けた手が止まる。 私、勘違いしていませんか。 あの子の牽制という進入禁止。 この扉の前にも、掲げられていませんか。 片想いという一方通行。 現実から目を背けて、突き進んでいませんか。 どこかにあったかもしれない一時停止。 見落としてしまう程、盲目ではありませんか。   焦って投函するこの手紙は、 速度制限で捕まってしまいませんか。   あの子より先にと出し抜いた場所に、 追越し禁止はありませんでしたか。 数年かけて積もった、 (おり)のようなこの気持ちは、 重量制限に引っ掛かりませんか。 信号も標識もない昇降口で、 立ち止まっていた私という唯一。 その横で停止した貴方。 落日のヘッドライトに浮かぶ二つの影。 ランプの代わりに交わす視線は、 勘違いではありませんか。 駐停車禁止の有無も分からず、 無意味に立ち止まっていたのではありませんか。 自動運転(オート)の人工知能のように、 有りもしない標識に止められていたのではありませんか。   貴方の前で踏むものは、 ブレーキではなく、 アクセルで合っていますか。 44ed329f-03a4-4e01-8734-7028eefe8c42

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