求愛

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祐「ごめんね。知らないフリしちゃってさ…」 そう言うと、ゆうちゃんは着ていた上着を華麗に教卓へと脱ぎ捨てた。 祐「まったく堅苦しい式だったね…クスッ…」 私を見つめるゆうちゃんの穏やかなその瞳はアメリカにいた頃と同じ。 祐「りーのっ!」 探るように覗き込むその瞳は私を忘れてなどいない。 梨乃「Oh my gosh……」 思わず私はゆうちゃんに抱きついた。 祐「…おっと……いきなりだね……クスッ…」 梨乃「だって嬉しいんだもんっ……」 そっと私を引き離すとゆうちゃんは私を覗き込んだ。 祐「…ん……梨乃、元気だった?」 梨乃「うんっ。ゆうちゃんも元気そうだね?」 祐「まぁね……クスッ…」 梨乃「あ、ゆうちゃん、CEOになったって……就任おめでとう。」 今や世界に名の知れた『大泉祐』がそこにいる。 似つかわしくないこんな場所に大企業のトップがいるなんて誰が思うだろうか。 祐「ん……ありがとう……って言っても実感ないんだけどね…ハハッ…」 そう言いながらも既にその雰囲気を十分に醸し出しているゆうちゃん。 その姿を見ていると私は少し距離を感じてしまう。 祐「それにしても驚いたよ。梨乃、生徒会長やってるんだね。」 普通なら生徒会長は最高学年がやるもの。 だけど、うちの学校はどの学年からも候補者を立てていいことになっている。 梨乃「なんかよく分からないうちに……」 入学してなかなか日本の高校に馴染めない私にそれを勧めてくれたのは一年の時の担任の先生。 人と関わるきっかけになればと私を生徒会役員へと推薦してくれた。 もちろん、推薦だけで生徒会長は決められない。 全校生徒による投票で2/3以上の獲得票数でもって決定となる。 ところが選挙当日になって他の候補者が次々と辞退。 残ったのは私と現副会長の成瀬のみ。
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