追想

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体育館のステージへぞろぞろと教師陣が上がっていく。 司会『それではクラス担任から……』 緊張の面もちをした新入生のクラス担任が次々と自己紹介を進めていく。 生徒の気を引こうとジョークを言って思いっきり滑る教師。 カタブツそうで物静かな面白みのない教師。 大学を卒業したばかりの期待に胸膨らませた初々しい教師など様々な顔ぶれ。 だけど、どの人もいまいちパッとしない。 成瀬「俺らの学年団の方がマシか…」 失礼ながら私もそう思う。 だけど、私は成瀬みたいにそれを口にはしない。 日本で言えばTPO。 time place occasion――… それを弁えるのは大事だ。 (まったくどうして日本の男の子はこう子供かなぁ…) 司会『それでは続きまして、新しく着任されました先生方を紹介いたします。』 その瞬間、生徒席がザワつき始めた。 成瀬「あの先生ヤバくね?」 見ればステージにこの学校にはいないようなタイプの教師が立っていた。 年齢は30代くらいだろうか。 日本の俳優で見かけるちょっとカッコいいと言われる類。 成瀬「女子らすごい騒いでるな……」 圧倒的オーラがそこにはある。 そしてその男は演台の元へ向かうと生徒達を見まわした。 教師「はい、そこの女子、うるせーぞ!静かに!」 その瞬間、またもや黄色い声が上がる。 男は演台にあるマイクを引き抜くと、勢いよく話し始めた。 河合「俺は河合翔。この学校の卒業生だ。陸上部の顧問を受け持つ。やる気のあるヤツは必ずインターハイに行かせてやるからこい。あぁ、根性ねーヤツはいらねーから!以上だ。」 教師らしからぬ自己紹介に教師陣が蒼ざめた。 ステージ下では教頭が口をパクパクしている。 成瀬「あの先生やばいな。けど俺、なんか楽しみになってきたわ…」 名顧問が辞め、ここのとこずっと落胆していたけれど、新たな顧問に光を見出したのか成瀬は久しぶりに笑顔を見せた。 紹介がすべて終わると教師陣がステージの下へと降りてくる。 教師陣は行きとは違う私たちのいる反対側の階段を下りてくる。 次々と降りてくる教師陣――… 風変りな陸上部顧問も降りてくる。 教師陣は私たちの前を通って元の場所へと戻っていく。 その時、視線を感じた。 その主はさっきの陸上部の新顧問。 視線が交わると、その男は一瞬驚いたような顔をした。 そして舐めるように私を見ながら横切っていく―― (…Gross!…なん……なの?この人……) 成瀬「なに?藤沢、知り合い?」 梨乃「…そんなわけないでしょ……」
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