Hの惨劇

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Hの惨劇

□  この手紙があなたに読まれている頃には私は既にこの世にいないでしょう。 そんなあなたに、お願いがございます。この島のどこかにいる私を見付けだしてやって欲しいのです。 私を発見した暁には、この島で起きた凄惨な猟奇殺人事件を、都会の人たちに伝えて下さい。私の家族には「私はもう帰らない」とそう伝えて下さい。 凶悪な犯罪者が、死ぬまで収容されている施設がありまして、その中の一名が施設から脱走したことがきっかけで、ほかの犯罪者たちも脱走してしまいました。 そこからは、思い出すのもおぞましい、地獄を絵図に描いたような光景が繰り広げられたのです。 強い者が弱い者から食糧や水を奪い、暴力と殺戮の限りを尽くし、更に、死んだ者の肉を食み、島は腐敗臭とどす黒い血、犯罪者たちの無惨な死骸で溢れかえる地獄と化してしたいました。 しかし、それはまるで白日に見る悪夢のように一点の痕跡を残さず消えてしまったのです。 私はこの島で、飢えと渇きと孤独に耐えきれず、そのストレスから酷い悪夢に魘されていたのだろうか? 頭を疑いましたが、夢にしてはおぞましくリアルで、こうして手紙をしたためている今も、夢から目覚めた夢の中にいるような混乱が頭をかきみだしております。 お願いです。どうか、この島で起きた凄惨な猟奇殺人の真相を暴き、世間さまに知らせて下さいませ。 私立探偵アラン・D・エドガー □
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