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私が心の病にかかり書店を離れると彼は、部屋に籠りがちな私を案じてくれる友人となってくれたのです。
私が失敗した話などをすると、大きな声でほがらかに笑って、決して否定せず、はげましてくれました。
お兄様は自らを不器用な人間だと仰っていました。
私もその通りだと思います。しかし、私もまた不器用な生き物です。
お兄様は相手のために心を砕くことの出来るひとでした。身ぶり手振りを駆使して、苦手な言葉で自分の気持ちを伝えようとするその姿は不器用というよりもひたむきで、とても純粋なものでした。
そうやって紡ぎだしてくれた言葉に、私は幾度となく救ってもらったのです。
その後、お兄様は仕事の都合で遠方へ越すことになりました。このときも、友との別れはつらかったですが、手紙のやりとりが唯一の支えでした。彼は決して筆まめではありませんでしたし、葉書に書かれたのも一言二言だけでしたが、私にとってはたいへん待ち遠しいものでした。
しばらく経って、今度は私が移動することになりました。それまでかかっていた病院から、べつの大きな病院へ通うことになったのです。
住み慣れた町をはなれるのにためらいはありませんでした。なぜなら、新しい病院がある街はお兄様がいたからです。
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