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私はまだこの街でお兄様にお会いしていません。
新居に招待していません。
洒落た喫茶店や、大きな公園や、百貨店などもともに巡っていないのです。
まだ若く、やりたいこともたくさんたくさんあったはずです。打ち込んでいることも、楽しみにしていることも、趣味の仲間も、うらやましくなるぐらいたくさん持っていたのに。
それらすべてを手放して、突然に旅立たなくてはならなくなったお兄様を思うと、可哀想で堪らなくなるのです。
どうしてでしょう。
なぜこんなことになってしまったのでしょう。
私はお兄様に謝らなければなりません。
こんなに近くにいながら、私は気づいてあげられなかった。見つけてあげられなかった。そうすることが私にはできたのではないかと思うのです。電車に乗ってほんの一時間ばかりの距離しかないというのに。
仕方がないこととわかっていながら、そう思ってしまうことがあります。
せめて最期が、苦しみも恐怖もなく、ふっと息をつくように穏やかなものであったことを願うばかりです。
縁も所縁もないこの土地で私はひとりぽっちです。
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